皮膚病治療(リアルタイム)⑥part1

[2024年11月03日]

皮膚病治療リアルタイムの第6回です。

今回もだいぶ調子がよさそうです。前回よりさらに毛が生えてきています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この子は、前回から治療内容を少し変えています。犬アトピー性皮膚炎の治療は

同じ治療をだらだらと続けていくことはなく、皮膚の状態によって治療を少しづつ

変えていきます。皮膚が赤くなりとても痒い時期とある程度時間が経って慢性化した

時期では治療戦略が全く異なります。見た目がきれいで痒みが全くない時期でさえも

この時期に合った治療を継続します。痒みが悪化した場合はその都度、感染の有無や

皮膚の状態のリチェックも必要になります。

ちょうど治療の話が出ましたので、ちょっと犬アトピー性皮膚炎の治療についての

話をしてみようかと思います。以前にも犬アトピー性皮膚炎の治療について

の内容をブログにあげていると思いますので、今回は細かいお薬や詳しい治療法では

なく、ざっくりと治療の根本のところのお話をしたいと思います。

この子を含め、柴犬は犬アトピー性皮膚炎の好発犬種として有名です。

ある病気に対してなりやすい犬種があるという場合は、遺伝的な要因が関係して

いることがほとんどです。遺伝的要因が関係するということは、その病気は基本的

には治らないということです。

犬アトピー性皮膚炎の場合は、遺伝的要因以外の病因も複雑に絡んでいるので

純粋に遺伝的要因のみの病気ではありませんが、遺伝的要因も絡むことからも

完治しない疾患の1つと考えて間違いはありません。

ですので、治療の目的は完治させることではなく、うまく付き合っていくこと

になります。私が犬アトピー性皮膚炎の飼主さんにお話しするようにしているのは、

症状は少しはあっても生活に支障がないレベルを目指して治療していきましょうと

いうことです。痒みを完全に引かそうとすると薬もそれなりに使う必要がでてきて

そうなると薬の副作用のリスクも増えてくるからです。

まず、これらのことが犬アトピー性皮膚炎の治療では大前提となります。

短期戦ではなく長期戦となるため、それなりに戦略を考えて継続可能な治療計画を

組み立てる必要があります。これは、わんちゃんにとってだけでなく、飼い主さんに

とっても無理のない治療法を考えていくことも含まれます。飼い主さんのライフスタイル

に無理のない治療法なのか、飲み薬か塗り薬か等の投薬方法(飼主さんができるのか)、

投薬回数(1日1回or1日2回など)、コストなども含めて治療計画を練る必要があります。

余談になりますが、アメリカ人はライフスタイルを崩されることを嫌がる傾向が強く、

完治しない治療をずっと続けていかないといけない場合、安楽死を選択することも少なく

ありません。それほど自分たちの日常生活を侵されるかどうかということに重点を置いて

いるのだと思います。海外の論文や文献を読むと皮膚病でさえ、安楽死の言葉がでてくる

ことがあります。私が学生の時にアメリカの動物病院で実習したときに1か月で3回の安楽死

に遭遇しました。当時はかなりショッキングな経験だったのを覚えています。その点、日本人

の飼主さんはとても我慢強く献身的だと思います。我々の治療提案に対して、頑張って協力

していただけることがほとんどです。それでも、なるべく飼主さんのライフスタイルに無理を

させない治療法を考えるようにしています。実際には、治療効果を取るか飼主さんのライフ

スタイルやコンプライアンスを優先させるか悩む事も多々あります。ただ、治療は短期間では

ありませんので飼い主さんが無理をすると長く治療していけません。可能な限り飼主さんが

無理をしない範囲内で折り合いをつけていく必要があります。犬アトピー性皮膚炎の場合、

BESTな治療で無理をするより、BETTERな治療で長く続ける方が良い場合もちょくちょく

あります。一番いいのはBESTで無理がない治療なんですけどね。いろいろな条件によって、

うまくいく場合とそう簡単にいかない場合があります。そこが治療を難しくさせる原因の

1つになることもあります。

長くなってしまいましたね。ちょっとのつもりでしたが、書き出すととまらくなってしまう

んですよね。。もうちょっとだけお話したいことがありますので、日を改めてこの続きをお話

させていただきたいと思います。

リアルタイム皮膚病治療の次回の診察は、調子がよく、維持治療になりましたので

3週間後にしました。それでは、今回はここまで!

 

森の樹動物病院は、鹿児島で犬と猫の皮膚病、アレルギー性皮膚疾患、

アトピー性皮膚炎、食物アレルギーの診断治療に力を入れています。

霧島市以外の遠方でも診察ご希望の方は、一度お問い合わせください。

なお、皮膚科診療の初診は、時間がかかるため予約制とさせていただいております。

皮膚科診察(初診)ご希望の方は、お電話にてご予約をお願いいたします。

ご予約なしでご来院された場合、十分な時間がとれないため詳しい検査はできず、

お話とお薬の処方のみとなることもございますので予めご了承ください。