脱毛症②

[2024年09月10日]

脱毛症の第2回目です。

今回は本題に入って、先天性脱毛症の各論的なお話をしようと思っていましたが、

気が変わりまして、ちょっとマニアックにいってみようかと思います。ということで

今回もまだ本題には入りません。私の興味の向くままに調べてみたことをご紹介したい

と思います。本題から脱線した番外編ですのでどうぞ気楽にお付き合いください。

 

前回ヘアレス種の話を少ししましたが、ブログに書いた後よくよく考えてみると

ヘアレス種について、なんとなく遺伝性の脱毛だという認識しかなかったなあと

思い、実際はどんな歴史があって、どのような遺伝的背景があるのか、またどんな

遺伝子変異があって無毛になっているのかなど興味がわいてきたので、特にヘアレス

ドックについてちょっと調べてみました。調べだすと面白くて止まらなくなってしまい、

ここ最近寝不足気味です。。。

現在、世界中に存在する犬種は700~800種類いると言われています。その中で

ヘアレス種はたったの7種しかいません。しかも、このヘアレス種は古代から存在

しており、最も古いヘアレス種はメキシカンへアレスドッグと言われています。

ペルービアンヘアレスドッグも古くから存在するヘアレス種の一つと考えられており、

インカ文明の陶器にこの犬種に似た犬が描かれているそうです。ヘアレス種の名前から

見てもわかるように、ほとんどが中南米を起源としているのが特徴です。

チャイニーズクレステッドドッグは、アフリカ原産のアフリカンサンドドッグが中国へ

伝わり、作り出された犬種と言われています。中国の伝説の動物である”麒麟”に風貌が

似ているので、縁起が良いという理由から王侯貴族たちに愛されました。

エジプトでもヘアレスドックが神聖視されていると前回のブログで書きましたが、紹介した

7種の中にエジプトの名を冠した犬種がいてもいいのではと私は不思議に感じたのですが、

実際はいません。そこで調べてみたところ、紀元元年前後にはエジプシャンヘアレスドック

という犬種が存在していたようです。しかし、現在は絶滅してしまったようです。

7種いるヘアレス種の遺伝的背景はどうなっているかというと、すべて同じではないようです。

大きく分けると古代から存在する犬種と歴史の浅い犬種の2系統になります。

チャイニーズクレステッドドッグとメキシカンへアレスドッグ、ペルービアンへアレスの3犬種は

いずれも7種の中で最も起源が古いことが分かっており、この3犬種は共通した無毛の遺伝子を

持っていいるそうです。この3犬種が同じ遺伝的背景を持っていることから。この3犬種の源流に

共通となるご先祖のへアレス犬種がいたことが考えられます。

ペルービアンインカオーキッドはペルービアンヘアレスドッグの兄弟種になります。つまり、ペル

ービアンヘアレスドッグから枝分かれしてできた犬種です。兄弟種ですので見た目も似ています。

違いは肌の色です。ペルービアンヘアレスドッグは全身の色が黒色で陽射しに強いことが特徴です。

ぺルービアンインカオーキッドは肌の色が薄く日焼けに弱いため、夜間しか散歩に行けなかった

ようで、ムーンフラワー・ドッグという別名を持っています。

さらにヘアレスカーラ(ボリビアンヘアレスドック)はペルービアンヘアレスドックとボリビア

の犬を掛け合わせて作り出されました。また、アルゼンティニアンヘアレスドックは、ペルー

ビアンヘアレスドッグとペルービアンインカオーキッドが大元になっており、アルゼンチンの

ブエノスアイレスが原産です。ということからこの3犬種は見た目が似ています。ちなみに、

アルゼンティニアンヘアレスドックは15世紀に誕生した犬種です。

ということで、これらの6犬種は同じ起源の遺伝的背景を持っているということになります。

最後に残ったアメリカンへアレステリアだけ、上記の犬種と遺伝的背景が異なっています。

非常に新しい犬種で名前の通り、アメリカが原産です。アメリカンラットテリアのヘアレスバージョン

です。つまり、アメリカンラットテリアの中からまれに生まれる無毛の個体から作り出された犬種と

いうことです。アメリカン・ケネル・クラブで公認されたのは2016年です。つい最近ですね。

アメリカンへアレステリアは非常に面白い特徴を持っています。生まれた時から無毛ではないそう

です。全身にまだらに毛が生えた状態で生まれてきて、2か月齢までに毛が抜けていってその後、

生涯毛が生えてこないそうです。なんで2か月齢まで毛があるのか、というのはちょうど毛周期が

1周するタイミングがこの時期で、毛が抜けた後新たな毛が作られないために脱毛となるようです。

と、ここまでは歴史と遺伝的背景についてでした。

このあとは、どのような遺伝子に異常があり、どんな異常が起こるのか、無毛になるメカニズムに

ついて遺伝学的な内容に踏み込みます。ここからが、面白いところなのですが、ちょっと出てくる

言葉も難しくなってくると思います。

それでは、今回はここまで。

 

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