脱毛症①

[2024年09月02日]

今回は、脱毛症についてお話します。最後に症例のご紹介もしたいと思います

のでお楽しみに!

脱毛症には鑑別疾患がたくさんあります。その中には治る脱毛症と治らない脱毛症があり、

きちんと診断がつかないとそのどちらなのかはわかりません。

前にも脱毛症についての内容をブログにしていますが、前回は犬の内分泌疾患による脱毛症

についてのお話でした。内分泌疾患による脱毛は、非炎症性で後天性の脱毛に分類されます。

今回は犬の非炎症性脱毛の中でも先天性脱毛症についてのお話をしたいと思います。

先天性脱毛症は、そうたくさんは来ませんが忘れたころにやってくるのでかなり稀というわけ

でもありません。うちへ転院される先天性脱毛症の患者さんの多くは、なんとなくサプリ

メントを出されて飲んではいるけど、何の病気かわからず、毛もはえてきません、この子の

脱毛は治るのでしょうか?とよく言われます。

この脱毛は治るのか?治らないのか?飼主さんが一番知りたいのはそこなんだと思います。

その質問に答えるためには、脱毛症をしっかり診断する必要があります。

先天性脱毛症の種類自体は、それほど多くはありません。また、若年で発症するという特徴

もありますので、少しでも知っていたら、あれ!うちの子もしかして!と、飼主さん自身が疑う

ことができるかもしれません。

 

それでは、始めます!

脱毛症とは、簡単に言うと毛が抜けて本来毛のある場所に毛のない病気のことを

言います。人間とは異なり、犬猫では全身に毛があるのが普通です。なので、

毛が抜けて地肌が見えていたら異常ということになります。ただし、毛がないの

が普通という例外もあります。ヘアレスドック、ヘアレスキャットと言われる無毛の

種類です。これらの種類は、おそらく最初は毛に関する特定の遺伝子が突然変異を起こして、

無毛の個体が生まれ、たまたまその個体のその姿を好んだ人々が飼育してきたものと考え

られます。その後、その遺伝子を固定するように意図的、選択的に交配させて一犬種/猫種と

して作り上げられました。このブリーディングの歴史は実はかなり古く、選択的に気に入った

ある特徴の犬を交配させて繁殖する、という試みはすでに9000年前には存在していたということ

が遺跡から出土した犬の骨より証明されています。ちなみに、犬種を意識したブリーディングは

1800年台中ごろのイギリスから始まったと言われています。現代の細かい規定に基づくブリー

ディングはこのころから始まりました。

厳密にいうと、ヘアレス種自体、遺伝性で先天性の脱毛症ということができますが、その”脱毛”

は病気としては認識されず、その”脱毛”自体がこの種の特徴であり、愛すべきチャームポイント

になっています。

特に古代中南米のインカ帝国、マヤ、アステカの人々は、毛のない犬を神聖なものと考えていた

らしいです。また、古代エジプトでは、毛が生えていないことは穢れのなさの表れだとして、

悪霊を追い払う特別な力があると信じられていたようです。

ちょっと脱線しますが、今現在ヘアレス種の犬猫はどれだけいるか知っていますか?

今の所、犬は7種類、猫は8種類います。これらの種類を知っていないと、もともと毛がないのが

普通なのに病気だと間違えてしまうことになります。

犬では①チャイニーズクレステッドドック、②ショロイツインツレ(メキシカンヘアレスドック)、

③アメリカンへアレステリア、④ペルービアンヘアレスドック、⑤ヘアレスカーラ(ボリビアンヘア

レスドック)、⑥アルゼンティニアンヘアレスドック、⑦ペルービアンインカオーキッドがいます。

①は有名ですよね、ヘアレスドックの中ではよく見る犬種です。

猫では、①スフィンクス、②ドンスコイ、②ピーターボールド、③バンビーノ、④ユークレイニアン・

レフコイ⑤ミンスキン、⑥エルフキャット、⑦ドウェルフがいます。この中では、①が有名ですね。

どんな見た目か興味のある人は、ネットで画像を探してみてください。

 

話をもとに戻しますが、これらのヘアレス種を除くと犬猫では全身に毛が生えているのが普通です。

毛が抜けて地肌が見えている場合、脱毛症という病気になります。

前回の脱毛の時にもお話しましたが、脱毛には炎症を伴う炎症性脱毛と炎症を伴わない非炎症性

脱毛があり、この2つに分けることから脱毛症の診断が始まります。また、発症年齢に着目すると

先天性と後天性に分けられます。この2段階で振り分けていくと、鑑別診断リストの内容がだいぶ

絞れてきます。ただし、一見炎症がないようにみえて炎症性の脱毛だったり、炎症があるように

見えても元の脱毛は非炎症性の脱毛であることもあるので、ここの見極めは病気を見る獣医師の

経験と腕によって差が出てくると思います。

 

すいません!思いつくままに書いていたら、結構長くなってましたね。

まだ、イントロダクションで全然本題には入っていないのですが、書きたいことがたくさんある

ので内容を分けて書きたいと思います。今回は、ここまでです。続きはまた次回!

 

森の樹動物病院は、鹿児島で犬と猫の皮膚病、脱毛症の診断治療に力を入れています。

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