犬アトピー性皮膚炎の治療例①
[2020年09月02日]
9月に入りましたね。台風が近づいているため、雨風が強くなってきています。
夏も後半になって台風が連発していますね。
さて今回は、犬アトピー性皮膚炎の治療症例のご紹介をさせていただきます。
【症例1】
トイプードル 7歳 メス(未避妊)
初発は4歳頃 年々悪化 1年中症状あるが春から夏にかけて悪化する
現在、アポキルにて治療 最初は効いていたが今はほとんど効かない 痒みで眠れない時もある
とのことで、都城から来れれました。トイプードルのアトピー性皮膚炎は多いですね。
さらに転院症例では、アポキル使っているけど効かないんですが、本当にアレルギーでしょうか
というお問い合わせが多くなっています。アポキルは、ステロイドに比べて副作用も少なく、
今流行りのお薬ですが、決して万能薬ではありません。
治療経過を前後で写真で示します。
治療前 治療後
結構、毛も生えてきました。痒みもほぼなく、飼い主さんの許容範囲内に収まっています。
毎年悪化していた夏のムシムシするこの時期に今のこの皮膚状態は上出来かと思います。
ちなみに、現在初診時に効果がないと言っていたアポキルをメインにスキンケアを
併用しながら、いい状態が保てています。アトピー性皮膚炎に対する万能薬はないと
言いましたが、皮膚の状態によって効く薬も効かなくなり得ます。
今回は、もともとアポキルが効いていたとのことでしたので、アポキルが効く皮膚の
状態まで治療しました。痒みは通年性とのことでしたので、今のいい状態がなるべく
長く維持できるように継続治療を続けていく予定です。
【症例2】
トイプードル 1歳6カ月 オス(去勢済み)
初発;6か月齢 近医にてアレルギーの治療しているがよくならない
症状;左右眼周囲、口周囲、左右脇の脱毛、紅斑、皮膚肥厚
とのことで来院されました。この子は、IgE検査、リンパ球検査を行い、除去食試験まで
行った上で、犬アトピー性皮膚炎と食物アレルギーの併発と診断しました。
ちなみに犬アトピー性皮膚炎の診断にIgE検査、リンパ球検査のアレルギー検査は必須では
ありません。あくまでも犬アトピー性皮膚炎の診断では臨床診断が大切です。
では、なぜ検査するのかというと治療オプションが増やせたり、抗原回避などの環境改善が
できる可能性が見つかるかもしれないからです。つまり、診断のための検査というより、
治療のための検査という位置づけになります。
食物アレルギーの診断には、除去食試験が必要となります。食物アレルギーはアトピー性皮膚炎と
症状が似ているため、見た目だけでは診断できません。詳しくは別の機会にお話したいと思います。
犬アトピー性皮膚炎と食物アレルギーの併発している症例では、この食物アレルギーの関与を見逃すと
必要以上に痒み止めのお薬を使用したり、効くはずのお薬が効かないなど治療がうまくいかなく
なってしまいます。今回はおそらく食物アレルギーの関与の見逃しがあったために治療がうまくいって
いなかったのだと思います。
治療前の写真がなくなってしまったので、治療後の写真のみですが、毛色が濃ゆくなった
部分が脱毛部位で発毛したところです。
この子は、スキンケアも結構効果があり、投薬もかなり最小限で痒みの維持が出来ています。
前のブログでも言いましたが、アトピー性皮膚炎では、アレルギー的側面だけでなく、非アレルギー
的な側面も関与しており、こちらに対してのアプローチもしていかなければなりません。
その1つが、スキンケアですが単にシャンプーだけしていればいいという訳ではありません。
ちなみに、この子は心因性の悪化要因もあったため、そちらのコントロールも同時に行っています。
症例①と②では、治療法が異なっています。2頭とも今はこの治療で落ち着いていますが、おそらく
時期によって治療法は異なってくると思います。冬になると乾燥が影響してきますし、それぞれに
関与しているアレルゲンも異なるため、その状況で治療法を組み合わせていくことになると思います。
いい状態を維持させるためには、環境と皮膚の状態によってその都度治療のさじ加減が大切になって
きますし、日々のスキンケアなど飼主さんの協力も不可欠となります。
重度のアトピー性皮膚炎の治療では、単一のお薬での治療では限界があります。さらに言うと、
お薬のみの治療だけではコントロールができない場合も多々あります。
森の樹動物病院は、鹿児島で犬猫のアレルギー性皮膚疾患、犬アトピー性皮膚炎などの痒みのある
皮膚病の治療、スキンケア療法に力を入れています。
霧島市以外の遠方でも診察ご希望の方は、一度お問い合わせください。
なお、皮膚科診療の初診は、時間がかかるため予約制とさせていただいております。
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