骨折

[2015年05月16日]

今月はまたまた連続アップになってしまいました。今年はネタがあるうちに溜めておかずに

どんどんアップしていきます!

ここ数年、トイプードルが人気犬種の1つとなっています。

当院でも、新規に来院される犬の半分以上は、トイプードルです。このトイプードルを含めた

トイ種に多くみられる病気の1つに骨折があります。特に多く見られるのが前足の骨折です。

ちょっと高いところから飛び降りてしまっただけとか、同居犬とと遊んでいたら急にキャンと

鳴いて片足をつけなくなってしまったりとかいうことで来院されることが多く見受けられます。

手首から肘までの間は橈骨と尺骨という骨で構成されていますが、トイ種の場合この骨が元々

細かったり、ぴょんぴょん飛び跳ねたりという性格もあり、骨折することがよくあります。

折れやすい部位もだいたい決まっていて、骨の中央から足先に近い部分でよく折れます。

骨折の治療法には、いろいろありますが大きく分けて内固定法(プレーティングなど)と外固定法

(ギプス固定など)に分けられます。

治療はどちらかの方法だけ、あるいはその両方を組み合わせて一緒に行うこともあります。

これらの治療方法の選択は、骨折した動物の種類(犬、猫、さらには犬種、猫種)、年齢や体格、

おとなしいか活発で落ち着きがないかなどの性格、骨折の部位やタイプなどによって決められます。

特にトイ種の骨折は、1歳未満の若年で起こることが多く、4,5mm程度の細い骨を整復しなければ

ならない上に、他の犬種に比べて骨折した骨がくっつきにくいこと、チャカチャカして落ち着きがない

ので安静が困難なこともあり、より積極的な治療を必要とすることが多々あります。

上のレントゲン画像はつい先日当院で手術をしたトイプードルの右前足の画像です。

左が手術前、右が手術後です。この仔は6ヶ月齢でおうちにきて3日目だったらしいのですが

同居犬と遊んでいたときにどうやら折れてしまったみたいです。

この仔場合は橈骨と尺骨が折れていました。体重は2.5kgで橈骨の幅は5mm、厚さは4mm

しかありませんでした。

今回は、若いということ、術後安静が難しいかもしれないということ、トイプードルという犬種

であるということを考慮して、プレートによる内固定法を選択しました。

橈骨にプレートをあてています。尺骨は非常に細くトイ種においては、プレートや髄内ピンの

装着は困難ですが、橈骨をしっかり固定すれば尺骨もきちんとくっついてくれます。

整形外科の治療には、原理原則があり、それに外れた治療を行えば骨はくっつかなかったり

それだけではなく骨が溶けていくこともあります。特にトイプードルでは他の犬種に比べて起こり

やすいと言われています。

今回の骨折は比較的治療しやすい場所(中央寄り)と折れ方(単純横骨折)でした。

ちなみに骨折部位が末端寄り(遠位端骨折)にいくほど、折れ方が斜め(斜骨折)になるほど、

骨片が多く(粉砕骨折)なるほど治療の難易度が上がります。

治療に用いるプレートにもたくさんの種類がありますが、今回はロッキングプレートという

比較的新しい種類のプレートを用いて骨折の整復を行いました。

ロッキングプレートには、従来のプレートに比べ利点があります。それは、従来のスクリューより

少ない数で同程度の強度が得られる(ロッキングスクリュー1本=古典的スクリュー3本)ということ、

プレートが骨に圧迫しないので血行阻害が最小限ですむということ、古典的プレーティングに比べて

作業工程が少なく手術が短時間で終えられるということがあげられます。

ちなみにロッキングプレートにも各種メーカーのいろんな種類のものがあります。

骨の癒合不全を防ぐためには、最小限度の切開となるべく骨折部位の軟部組織をいじらないこと、

骨膜からの血行を維持することが重要です。

上記の利点もあり、今回はロッキングプレートによる整復を行いました。

術後の回復はよく、術後2日目にはもう手術した足をついて歩いていました。

ちなみにこの写真は、今回用いたスクリューです。幅が1mm程度しかありません。吹いたら飛んで

いってしまいそうですよね。

よくみてもらうとわかると思いますが、ねじ山がスクリューヘッドにもみられます。先端側のねじ山

は骨に、ヘッドのねじ山はプレートにかむようになっています。スクリューがプレートにロックされる

ことからロッキングプレートと呼ばれます。

トイ種を飼われている方、くれぐれも骨折にはご注意くださいね!