胆嚢のお話
[2015年01月30日]
この間の日曜日は鹿児島大学で行われた獣医師会の講習会に参加してきました。
宮崎大学の鳥巣先生による消化器外科のお話でした。同じ日に獣医がん学会の日程が
かぶってしまったのですが、どうしても鳥巣先生の話が聞きたくて講習会のほうに参加
してきました。鳥巣先生の講義は今までも何回か聞かせていただく機会があったのですが、
今回も豊富な経験に裏打ちされた内容でとてもわかりやすく勉強になりました。
今回の話の中にもあったのですが、勤務医時代も含め、胆嚢疾患に遭遇する機会が年々
増えてきているなと実感します。昨年参加したセミナーの中にも胆嚢疾患に関する内容の
ものがいくつかありました。このように胆嚢疾患に関するセミナーが多いということからも実際
に胆嚢疾患に遭遇する機会が増えてきているのだろうと思います。
胆泥症は、胆嚢の中の胆汁が泥のようになって貯まってしまっている状態のことをいいます。胆泥症
はほっとくと胆嚢炎や胆管閉塞、感染、胆嚢変性を起こす可能性がありますので、見つけたらなるべく
早めに利胆剤等を用いて治療をします。場合によっては胆嚢摘出も考慮します。
胆嚢粘液嚢腫は、胆嚢の粘液分泌腺の過形成によって起こります。胆嚢の中にどろどろしたゼリー状
物質が貯まった状態になります。胆管閉塞や胆嚢破裂が起こらなければ無症状ですが、二次的に胆嚢壁
の虚血壊死や胆道感染、胆管肝炎などを起こしても症状が出ます。胆嚢壁が破けた後、癒着して破けた
ところが塞がってしまうと症状が一時治まってしまうこともあります。アメリカのレポートには来院時
60% はずでに破裂していると書かれているものもあります。基本的には進行性で回復しないのでな
るべく調子のいい時に胆嚢摘出を行うのがよいとされています。胆嚢粘液嚢腫の周術期死亡率は22~
32%と言われていますが、黄疸が出ているときの周術期死亡率はかなり高くなります。
今年に入って、当院でも胆嚢粘液嚢腫で閉塞性黄疸を呈した症例が来院しました。2日ほど内科治療
を行い、黄疸がある程度改善したところで胆嚢摘出と総胆管の閉塞解除を行いました。胸の深い犬種で
したので手術は視野の確保と作業が結構大変でしたが無事に手術を終えることができました。摘出した
胆嚢の中はどろどろとした黒っぽいゼリー状物質が充満していました。総胆管にはこのゼリー状物質が
詰まっていたみたいです。
術後の経過はよく、症状も改善し無事退院していきました。術前には、死亡のリスクも話していまし
たので、術後元気にご飯を食べたり、走り回っている姿をみて飼い主様は大変喜んでいました。
胆嚢の病気は、外見上全く症状がなくても進行していきます。また、胆嚢破裂や胆管閉塞を起こせば
急変して緊急手術が必要になったり、手遅れになることもあります。症状が出る前に見つけて早めに
対処することが大事です。当院では、中年齢になったら年に1回の健康診断をおすすめしております。
胆嚢疾患に限らず、病気の治療は、”早期発見早期治療”が一番です。
健康診断に関しましては予約制となりますので、ご希望される場合はスタッフまでお尋ねください。