日々是鍛錬
[2013年09月09日]
朝晩だいぶ涼しくなって、昼間も若干日差しが和らいできたような気がします。
今年は手術のスキルアップを目指し、いろいろな外科実習に参加しています。そして帰って
からも暇があれば練習をしています。私の知り合いの人間の外科のお医者さんも手術のない
日でも練習をしたり 実習や講習会でで技術を磨いたりしているそうです。
飼い主様には日曜日の診療を休ませていただくことも多く、大変申し訳なく思っておりますが
実習で得た知識や技術を飼い主様とそのペットへ還元できるよう頑張りますのでご理解のほど
宜しくお願いいたします。
今回、私が参加させていただいた実習や日頃の練習を少し紹介させていただこうと思います。
まずは、眼科です。本物の犬の目を練習に使うことはできませんのでお肉屋さんに頼んで
豚の目を購入して練習しています。
発泡スチロールの台に注射針で固定します。下のようにセッティングをして練習します。
左は角膜縫合、右は結膜フラップです。角膜に潰瘍ができたときなどに行う手技です。
眼科の手術は細かい作業が多く、また器具も繊細なものが多いので日頃の練習がとても大事だと
思います。しかもそんなに沢山の症例が来るわけではないのでいざというときにスムーズに手術が
できるように日頃の練習でなるべく手が鈍らないようにしています。
次の写真は、麻酔の実習の時の写真です。まるまる1日朝10時から
夜11時までアメリカの麻酔科の専門医の先生にみっちり座学と実習を
行っていただきました。
写真は動脈血管のルート確保を行っているところです。麻酔のセミナー
はほとんどが座学なので今回の実習は大変勉強になりました。
麻酔って毎回同じじゃないのって思っていませんか?麻酔は、患者の
年齢や状態だけではなく、どのような処置を行うのかでも変わってきま
す。例えば、検査だけなのか?手術でも避妊去勢の手術なのか?骨折の手術なのか?
によっても侵襲や疼痛のレベルが変わりますのでもちろん麻酔、疼痛管理の仕方が変わってきます。
当院ではマルチモダール鎮痛、バランス麻酔の徹底を心がけて麻酔を行っております。
マルチモダール鎮痛とは、作用機序の異なる鎮痛薬を複数用いる鎮痛法です。このようにすることに
よってそれぞれの薬の必要量を減らし、副作用を減らす事ができ、痛みによるストレスからも守ること
ができます。今までの獣医療では、動物の痛みに関して軽視する傾向にありました。しかし、現在
では痛みによる様々な有害反応がわかっており、術後の回復もしっかりとした疼痛管理をすること
により早期に認められることが分かっています。
当院では、鎮痛作用の強いフェンタニルやレミフェンタニル、トラマドールなどのオピオイドも
積極的に使用しております。手術の種類にもよりますが4、5種類の作用機序の異なる鎮痛薬
を用いています。
特に避妊、去勢手術においては、飼い主様やそのペットにとって初めての手術になりますので
恐怖や痛みのストレスを与えないように細心の注意を払っております。
当院では、手術前に必ず”手術説明”を書かせていただいておりますが、この時に飼い主様に
麻酔の方法や内容から手術のメリット、デメリット、他の治療法との比較、予後、費用等について
説明しております。これは少しでも飼い主様の不安を取り除きたいということもあり必ず行って
おります。また、術後に術中の写真を含め飼い主様に手術報告させていただくこともあります。
100%安全な麻酔は存在しません。でも、100%安全な麻酔が存在しないからこそ、できる限り
安全な麻酔、そして飼い主様に安心していただける麻酔を行っていきたいと思っています。
まだまだ実習報告はあるのですが、今回は長くなってしましましたので、残りはまたの機会に
報告させていただきます。