診断力
[2015年05月13日]
台風はあっという間に通り過ぎてしまい、今日は暑いくらいですね!
連続のアップになりますが、今回は私が普段診療の際に大事にしていることについて述べたいと
思います。
私が日ごろの診療で大事にしているのが、”診断”です。
ホームページにも載せていますが、基本的には診断があって初めて治療方針が決まる
ものと考えています。
ただし、治療が先行するちょっと例外的な方法もあります。特に皮膚科診療で用いる
ことがありますが、仮診断から治療を開始し診断をつけたり(治療的診断)、1つずつ
治療を行って診断を絞り込んでいく方法(除外診断)です。
確定診断にたどり着くまでに問診のみで済むもの、問診をして鑑別診断リストを考え、
そこから絞り込んでいくために検査計画をし検査結果から診断をつけられるもの、検査結果
から仮診断をし、さらに高度医療機器を用いた精密検査が必要になるものなどいろんな
パターンがあります。
私たちの診療対象は、犬猫などの動物たちです。言葉を発することができません。
ということは、主訴が患者本人の主訴ではなく、飼い主の主訴ということになります。
さらにその他の情報も飼い主が気づけたところのみに限定されてしまいます。
人の医療では、小児科の診療が私たちの診療と似ているのだろうと思います。
個人的には小児科医の診断プロセスにすごく興味をもっています。
診断とは、入手できる情報、自分の知識を総動員して謎解きをしていくようなものです。
NHKの総合診療医ドクターGって見たことありますか?研修医が病名を探り当てるまでの
謎解き番組です。結構面白くて私の好きな番組の1つです。医療関係者でなくても楽しめる
と思いますので、機会があればぜひ見てみてください。
”診断”って診療行為の中でとても重要なのですが、大学ではきちんと習った記憶がありません。
正確に言うと個々の病気に対する診断法は習いますが、まだ病名もわからない患者に対する
診断アプローチの方法は習いません。
みんな大学を卒業し、働きながら経験をつみそれぞれ研鑽していかなければなりません。
診断方法って人それぞれで、なかなか人に教えたり教わったりしにくいところがあります。
勤務医時代は、先輩獣医師の診察を影からこそっとのぞき見て、診療の流れやフレーズを
盗んで自分の診療に取り入れてきました。なんか職人技的な感じがしますよね。
勤務医時代から、診断精度も上がってきてそこそこ見れるようになってはきたのですが
この人それぞれ的な、なんとなく教えにくく教わりにくい的な”診断”に違和感がありました。
開業してからも、診断力を磨く方法はないかずっと考えていました。なるべく見逃しが少なく、
誤診を避けられる方法はないかと。
もっと論理的に診断していく方法はないかと人医の特に総合診療科の先生の本を読み漁りました
(残念ながら獣医系の書籍にはこのような類の書籍でよいものは皆無といっても過言では
ありません…)。
その中で、数冊とてもよい本と出合いました。それらの本を読むことで医学はやはりScience
であるということを再認識させられました。
先ほど”職人技的”という言葉を用いましたが、熟練者ほど的確で迅速な診断を行うことが
多くみられます。私も勤務医時代診断に悩んでいるところに先輩獣医師がさらっと言った
一言で診断への筋道がパッと開けたということが多々あります。
これは経験値の蓄積による直感的診断思考によるものだと思います。この思考法を用いると
この病気かなとあたりをつけ、診断をすすめていくことで最短距離で確定診断にたどり着ける
ことがあります。救急医療などにおいて時間勝負の時には威力を発揮します。
ただし、これは諸刃の剣で経験による決め付けによって誤診をする可能性も生み出します。
なので、大事なのは直感的思考のみにたよらず、分析的思考をバランスよく用いて慎重に
判断することが大事になってきます。
ただどの仕事も同じかもしれませんが、慣れれば慣れるほど先入観にとらわれてしまいやすく
なるので要注意なんでしょうね。
なんか難しい話になってしまいましたね…。実際の診察では、淡々とお話をしていますが、
頭の中ではいろんなことを考えています。診断のためには飼い主様の情報も非常に重要ですので、
その際はご協力いただけると助かります。